「第17回弁護士業務改革シンポジウム」。

弁護士業務改革シンポジウムを支える業務改革委員会の活動の概要

 今年の11月11日(金),日本弁護士連合会(日弁連)主催の「第17回弁護士業務改革シンポジウム」が横浜パシフィコにおいて開催されます。個人的に気になったので,いろいろ調べてみました。
・「第17回弁護士業務改革シンポジウム」案内
 http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2011/111111.html
・横浜パシフィコ ホームページ
 http://www.pacifico.co.jp/
 弁護士業務改革シンポジウムとは,日弁連の業務改革委員会(業革委員会)が主体となってシンポジウム及び全大会を運営し,業革委員会の各小委員会及びプロジェクト・チーム(PT)が各分科会を企画,運営するものです。俗にいう「業革シンポ」です。
 日弁連のホームページによれば,「日弁連では、弁護士業務改革委員会を設置し、多角的な視点から弁護士業務をよりよいものにするよう研究し、弁護士業務の改善・改革に取り組んでいます。」とのことで,業革委員会の取組みは,「弁護士業務をよりよいものにする」という目的を達成するために必要なことを鋭意取り上げてアクションを起こす,というものです。もともとは,業革委員会は,昭和52年に発足した業務対策委員会を後身で,その発足以来,弁護士業界の取組みが不十分である事柄について,自ら刷新を図るために活動してきたものということができます。現在は,12のPTを組織し(2011年現在),主として,国民や中小企業が弁護士を利用しやすくするような活動,企業や公共団体におけるコンプライアンスの増進に関する活動,弁護士や法律事務所の能力向上や経営の問題へのアドバイスなどの活動,社会の変化に伴う対応などの活動を行っています(上記ホームページ参照)。
・業務改革委員会について
 http://www.nichibenren.or.jp/activity/improvement/reform.html

弁護士業務改革シンポジウムの歴史

 このシンポジウムは,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命とする弁護士の役割を大前提としつつ,上記のような業革委員会の取組みを外部に発信する重要なイベントとして位置付けられ,すでに16回開催されています。過去の弁護士業務改革シンポジウムの概要を見てみると,時代の状況に応じてシンポジウムの内容や規模が推移していることをうかがい知ることができます。
・過去の弁護士業務改革シンポジウム
 http://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/organization/event/gyoukaku_sympo.html

第17回弁護士業務改革シンポジウムはロー生・修習生こそ必見(!?)

 今回の弁護士業務改革シンポジウムは,11の分科会を設け,様々なニーズが存在する時代状況をよく反映するものとして構想されています。その中でも,第1分科会は,「小規模法律事務所におけるマーケティング戦略〜さらなる依頼者志向へ〜」という題目で,「法律事務所」と「マーケティング」とを結び付けることを試みるもののようです。
 これは,ホームページ上の案内を読むところから,若干の推測を混ぜて考えると,司法制度改革により法曹人口が激増し続ける時代に突入し,そのような中にあって,漫然と弁護士業務に取組みだけでは弁護士として不十分であるという問題意識の下,マーケティング理論を踏まえた戦略を議論していくということになるでしょうか。
 私は,修習の日程上,このシンポジウムに参加することはできませんが,これは,法科大学院の在学生,修了生及び修習生(行けるのは,今秋採用見込みの新65期の方々でしょうか。)にとって,必見のものではないかと思います。
 周知のとおり,年々,修習生の進路決定率は悪化の一途をたどっています。このような時代にあっては,「新司法試験等の試験問題を解ける能力」だけでは,到底資質を図るには足りないと考えられます。弁護士(ないし法律事務所)は,「良いリーガル・サービス」を提供できるだけではなく,むしろ,そのためにも,「良い経営」を追及する必要があるでしょう。「明日食うに困る」という状態では,「顧客(=依頼者)のために」という責務を達成できるのか,疑問があるものといわざるを得ません(また,善意で身銭を切っているだけでは,破綻してリーガル・サービスを提供する資格を失うことにすらなりかねません。)。
 修習生までの段階において,弁護士業界に入ることを検討する場合,「内定を取る」という目先の目的に囚われてしまうとすれば,その後弁護士になった場合に行き詰まる危険性が高いでしょうし,そもそも,そのような短見では,よほど法科大学院や新司法試験における成績がずば抜けていない限り,内定を得ること自体が難しいでしょう。
 先が見えないという悲観論が立ち込めつつある今だからこそ,5年先,10年先を常に自分なりに具体的に(かつ青臭く)描いていくことが大切になると思われます。ご参加になる法科大学院の在学生,修了生,修習生の方々が羨ましいものです。
 日々,できる限りで友人の伝手などを頼って色々な業界の方々のお話を伺ったり,書籍を大人買いして法律以外の分野(隣接分野から離れた分野まで)の勉強をしたりしていると,それらは非常に楽しいのですが,いよいよ修習が終わると,そのような時間を十分に持つことができるかどうかは分かりません。今回は無理ですが,今後,こういう機会を大切にすることにしようと改めて思いました。

平成23年新司法試験の合格発表日時等について。

 いよいよ来週は今年の新司法試験の合格発表です。
 法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/content/000077880.pdf)によれば,来週の9月8日(木)の午後4時に発表されるようです。
 私も,去年,霞が関まで出向き,掲示板を見に行きましたが,行きの電車の中で,予め受験番号を教えていた方に「おめでとうございます!」と伝えられていたので,掲示板は確認しに行っただけとなってしまいました。ですが,それまで旧司法試験で何度も落ちていたこともあり,「もう受からないんじゃないか。」という不安に長らく苛まれていたのがようやく晴れた思いでした。
 今にして思えば,司法試験は単なる入り口に過ぎませんので,それ自体をゴールと思ってしまってはいけませんが,合格するまでは,どうしても目の前に聳え立つ司法試験の壁が高く感じられ,その後のキャリアプランにはなかなか目が向かないのが実際です。
 合格発表を目前に控えた受験生の方々のほとんどは,今,本当に不安でいっぱいなのではないかと思います。それは当然のことです。全く不安に思わないとすれば,人間離れした強靭な精神力を持っている方か,そもそも合格を諦めてしまった方(典型的には,受験勉強自体が本気ではなかった方)くらいでしょう。
 私の友人・知人にもたくさんの受験生の方々がいますので,私自身,非常に気になって仕方がないのですが,無事に合格されていることを心より祈念しています。
 そして,合格後の道のりもかなり険しいものです。給費制が打ち切られて貸与制に移行する可能性が高いこと,修習中までに首尾よく進路が決まる人の割合が年々低くなっていること,法曹人口の増大により「食えなくなる弁護士」が急激に増加していく可能性があることなど,修羅場はむしろ合格後に控えています。
 受け身の姿勢で悲観論にどっぷり浸っている場合ではありません。今こそ,若手がどんどん主体的により良い法曹界を作る流れを生み出すべきでしょう。合格は,あくまでもその序章へのチケットに過ぎないと思っています。

給費制から貸与制へ

司法修習の給費/貸与に関する法曹養成フォーラムの見解
司法修習生「貸与制にすべき」法曹養成フォーラム(日本経済新聞
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E1E3E2E1938DE1E3E2EAE0E2E3E39180EAE2E2E2;at=DGXZZO0195583008122009000000
・貸与制移行で最終合意,司法修習生の給与支給(東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011083101000611.html
・<司法修習生>給費制打ち切り貸与制へ−政府フォーラム方針(毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110831-00000113-mai-soci
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110901ddm012040168000c.html
・貸与制移行で最終合意 司法修習生の給費制打ち切り(MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110831/trl11083121510009-n1.htm
日本弁護士連合会会長宇都宮健児弁護士の会長声明
・法曹の養成に関するフォーラム第一次取りまとめにあたっての会長声明(日本弁護士連合会)
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2011/110831.html

(青臭い)使命感。

 現行制度における1年間の司法修習のカリキュラムは,実務修習,選択修習及び集合修習により構成されています。そのうち,実務修習は,刑事裁判,民事裁判,検察及び弁護の4つにより構成され,修習生は,2か月ずつ,合計4クールで研修することになります。その後,一定の選択肢が与えられて自らカリキュラムを組む選択修習と,司法研修所で課題に即し起案などをする集合修習が控えています。これらのカリキュラムを終えると,考試(いわゆる2回試験)を受け,一定の水準を満たす者に限り,司法修習を了することになります。私は,現在,4クール目の弁護修習を終え,これから選択修習に入ります。
 ひととおりの実務修習を経て,裁判官,検察官及び弁護士の仕事がどのようなものであるかに触れてきましたが,本当に勉強になることばかりです。その学びの過程では,当事者の方々がいらっしゃる生の事件に触れるわけですが,当事者の方々の秘密ひいては司法制度に対する社会の信頼を害することがないように,生の事件の出来事について,こうしたブログの場で語ることはできません。しかし,これまでの8か月だけでも,語りつくす言葉を調達することが困難なほど,様々な経験をしてきました。
 今年は,今話題の円高にも関わる折からの不況もさることながら,司法制度改革により徐々に明るみに出てきた法曹界の問題点,今年の3月11日の東日本大震災からの復興の問題のように,これからの社会をどうしていくかがクルーシャルに問われるものに満ちています。このような状況においては,司法修習を通じて「学ぶ」というレベルにとどまっているのは,しばしばもどかしさを覚えます。「今,自分には社会のためにできることがないのだろうか」という無力感がないとも言えない心境です。しかし,この鬱憤は,司法修習を終えて法曹になってからの仕事の日々に備えて,使命感を醸成するに十分です。人間1人のできることが微々たるものに過ぎないことは重々承知していますが,それにもかかわらず,もとい,そうであるからこそ,自分に求められる役割を敏感に察知し,考えて,社会貢献していきたいと強く思っています。

新司法試験(短答式試験)の結果公表。

 本日,今年度の新司法試験の短答式試験の結果が公表されました。それによれば,採点対象者数は8721人で,去年は確か8090人でしたので,微増しました。それにもかかわらず,合格者は5654人で,去年より少しだけ減ったようですから,短答式試験の競争はやや激化した模様です。また,個人的に目を引いたのは科目別の足切り人数で,公法系は391人,民事系は153人,刑事系は702人でした。これらは全体として去年よりもかなり増えていますが,知人等から聞くところによれば,行政法刑事訴訟法がかなり難しくなったということで,それがそのまま影響したのであろうと思われます。ですが,厳しい見方をすれば,合格に必要な得点は210点で,努力だけで到達できるラインであろうと思いますので,決して難しい数字ではないでしょう。委員会当局が,短答式試験に通過できないのは土俵に乗せるに値しないレベルだと考えているとしても,それはおそらく当然でしょう。
 いずれにせよ,問題は,論文式試験の点数に絞られます。短答式試験の点数が合否に多少影響を及ぼすとしても,その程度は限定的なものですから,論文式試験の点数がいずれ公表される合格レベルをスレスレで超えていたのに,短答式試験の点数が合格者平均を下回る結果,最終合格を果たせないとしても,それは,短答式試験の点数ではなく,論文式試験の点数に問題があるというべきでしょう(少なくとも,受験生としてはそのように考えた方が合格率を高める上で遥かに効率的です。)。
 ですが,論文式試験の点数は,蓋を開けてみないと分からないところがあり,それは「考える力」を審査するという試験の性質上やむを得ないところでしょう。そのため,受験生の方々は,(去年の私がそうであったように,)心の片隅に常に不安を抱えながら何か月も過ごされることになってしまいますが,それ以上に,平日も含めて時間を自由に使える期間は今だけですから,その素晴らしさを存分に享受されたいところです。
 誰に見せるというものでもありませんが,そのうち,今年の問題を解いてみようかなあ,などと思っています。いかに自分の力量が劣化したかを思い知ることになるのは日の目を見るよりも明らかなのですが。

新司法試験最終日終了。

 ついに,昨日,刑事系の論文式試験が実施され,本日,択一式試験が実施され,本年度の新司法試験が終了しました。今年度からは,論文式試験の必修科目について,7法それぞれを2時間ずつにしたほか,択一式試験が最終日に実施されることになりました。このような変更点は,受験生の方々にとって心理的な負担を与えるものであったと思われますが,どのような順番であっても,科目の変更があるわけではありませんから,結局,解く問題の質及び量には大差はないものといえます。最終日は,「ここまで来たら,後はどうにでもなれ!」というような気持ちで思い切り臨まれるのが良かったものといえそうです。
 私自身,一部の友人らのことが気がかりになり,最終日の日程が終わるころ,池袋会場に足を運んでしまいました。何人かの友人や後輩に会いましたが,多くの方々は,出来はともかく,持てる力をできる限り尽くしてきたという感触はあるようでした。実際,あのハイレベルの問題を解いた後,出来について自信があるというのは不思議ですから,「やるだけのことはやった」という感触があれば,それ以上のものはないと思います。結果が出るまで,しばらくは,気がかりで仕方がない時期を過ごすことになりますが,ほとんどすべての先人が通ってきた道ではありますから,上手に耐えるしかないでしょう。
 むしろ,合格後のことを考えなければならないリアリティを直視するのが重要です。今の時代は,司法試験に合格しただけでは,具体的な進路を確保できないケースが多く見られます。実際,ここ数年,修習生は,修習期間1年間の約半分を経過したころでさえ,進路が決まっていない方が大勢いらっしゃいます。これは,本当に甘く見てはならない事態です。合格者が増えるということは,ほぼ必然的に,競争原理的要素が占める割合が大きくなってくるということにつながりますから,「合格率の上昇」は「就職先の見つけやすさ」と反比例するのは自然なことです。
 もっとも,経験的にいえば,このような状況にあっても,自ら積極的に行動するタイプの人は,比較的早く進路が決まっているのも確かな傾向です。しかも,「自ら積極的に行動する」といっても,「事務所受けする履歴書」や「裁判所/検察庁受けする起案」というような「正解志向」型の「優等生」になるべきだ,という意味では必ずしもありません。司法試験受験生の直前までの間,ロースクールという「学校」に通うようになったためか,いわゆる「学生気分」の抜けない修習生が少なくない,という指摘がされているところです。例えば,弁護士の方々からは,事務所訪問の際,いわゆる就活本を丸暗記してきたような修了生/修習生が多くいらっしゃるため,個性もなく,優劣も付けにくい,というようなお話をたびたびお聞きします。「採点基準に沿った対策」は,合格後も通用するとは限らないということなのでしょう。
 司法試験を受験された方々は,今,修習期間以上に時間のある時期をお過ごしになると思いますが,ぜひ,「みんなと同じこと」に勤しんでこられた今までの日々とは打って変わり,「必ずしも正解が決まっていない」世界で,伸び伸びといろいろなことに打ち込んでいただければ,と思います。再現答案を作成して後輩などの役に立つ,これまで勉強したことがない法律の勉強を始める,英語や中国語などの外国語を勉強する,法律とは全然関係のない分野を学んでみる,留学をする,狂ったように遊びほうける,法曹界の実情についてリサーチをして将来のビジョンを考えてみる,修習内容を先取りした勉強を始めてみる,アルバイトなどでなかなか体験できないことをする,簿記などのビジネス系の試験を受ける,しばらく封印してきた趣味に走る,趣味の幅を広げる……など,本当にいろいろなことをすることができる時期です。そして,無事の合格を祈念しております。

新司法試験2日目終了。

 新司法試験は2日目も終了しました。
 昨日とは異なり,本日の問題について,誰からも具体的な内容をお聞きしていませんので,内容については何も言及することができません。ですが,今年も,さぞかし難しい問題が出たのではないかと想像しております。
 民事系は,去年までのいわゆる「大大問」が廃止され,基本的には,民法,商法,民事訴訟法の各試験が2時間ずつの時間割で行われることになりました。それでも,融合問題的な出題の可能性は残されているようですし,また,上記の3科目の各試験がどのような順番で行われるかについては,試験時間が開始するまでは(当日すら!)分からないという状態ですから,受験生の方々にとっては,非常にプレッシャーがかかったのではないかとお察しします。
 しかし,いずれにせよ,これで論文式試験は大半が終わり,残る科目は刑事系のみとなりましたから,山場を越えたという感覚を抱いている受験生の方もいらっしゃるかも知れません。また,ここまで来れば,択一式試験が最終日に控えていることも,ほとんど取るに足りないように思えてくるかも知れません。あとは,そのままの勢いで駆け抜けるだけです。
 ただし,明日は試験が行われない中日です。この中日の過ごし方は意外と難しいと思います。しかも,この過ごし方は,各受験生の方の性格とも大きく関わるところで,一概には「正解」が分かりません。
 しかし,それならばいっそのこと,「好きなように過ごす」というのもアリなのではないかと思われます。実際,私自身は,事前に計画を立てることはせず,気の赴くままに過ごしておりましたし,それで何かを失敗したと振り返るところもありません。何よりも好ましくないのは,ここまでの「前半戦」の出来を不安に思うあまり,心身の疲れが全く回復しないまま,刑事系の試験に突入してしまうことでしょう。
 とにもかくにも,ここまで答案をすべて無事に提出された方には,その労を労い,拍手をお送りしたい思いです。お疲れ様でした。「後半戦」の更なるご健闘をお祈りしております。